誰がテレビを殺すのか フジはわざと地上波をつまらなくしていると思う。
今号の週刊ダイヤモンドでテレビの特集をしてましたのでその書評を書き連ねます。
まず一口に「テレビ」と言っても、記事はフジテレビの事中心に話が進んでいます。
これが7年くらい前だったらTBSのことばかり特集されていたような。
ちなみに2010年のサイゾーのテレビ特集では、フジテレビ最強みたいなかんじに書いてたと思う。
要は、2012年以降のフジテレビの凋落っぷりに焦点を充てて、テレビ業界全体がヤバくなってるよってことを言いたいわけです。
で、この特集では3つの項目からテレビ業界の現状を紹介しています。
以下そのコンテンツ。
1 王者フジテレビはなぜ凋落したか
・止まらない視聴率の低下
『グッディ!』1%台『HEAT』2%台『恋仲』初回9.8%
→30代以上の人向けに番組をつくれば視聴率は上げられる。しかし、若い人向けに作って来た自負がある
→スイッチ・メディ・ラボのデータを観てみると、若年層には日テレの方が健闘している。
・上層部の過度な現場介入が原因?
→亀山社長はじめ、箸の上げ下げまで注文したことも。
・『孤独のグルメ』は共同テレビ(フジテレビ系列の制作会社)制作だが、フジテレビに企画が通らず、テレ東放送へ。
・組織的に人を育てようという文化がない
→日テレ24時間テレビは前年から担当が準備を始めるが、27時間テレビは毎年制作スタッフが変わる
・最近のスポンサーは、順位によって各局に広告を出稿していたが、最近ではトップ一局にしか広告を出さない。
→フリーディレクターにとってはフジの仕事は無駄な仕事
2 巨艦ネットフリックス上陸
・ネットフリックスがフジにコンテンツ制作の話を持ち込んだ
→しかし制作費はフジが考えていた10倍。いまフジは、地上波ドラマを一本3000~4000万で作っているが、Web配信は数百万単位。
ネットフリックスは1本4000万円で打診。制作費はネットフリックス側が捻出。しかも地上波での放送権もフジに。
→フジはFODという動画配信サービスを始めているがあまり普及せず。
自社コンテンツを他サイトに配信したくないという気持ちはあるが、各社動画配信サービスにコンテンツを提供。
フジ → ネットフリックス dTV
日テレ→ hulu dTV
テレ朝→ hulu dTV amazon プライムビデオ
TBS → hulu dTV amazon プライムビデオ
テレ東→ hulu dTV amazon プライムビデオ ネットフリックス
・制作会社各社が「脱テレビ依存」雪崩を引き起こす
→テレビ局と制作会社はほぼ主従関係。制作費も削減の流れから、稼ぎも少なくなる。
しかしコンテンツ配信会社からは従来よりも多く制作費がもらえ、制作上でも自主規制もなく、自由に作れる
3 崩壊し始めた民放の収益構造
・視聴者の8割が録画視聴で広告をスキップ
→リアルタイムでの視聴が全て。
・フジテレビではスポット広告の減少が止まらない。
→とはいいつつ企業としての収入は放送収入だけではないので大丈夫と会長は語る。
・お台場にカジノ設立計画を本気で進めている!?
て感じ。
もうちょっと記事書いて欲しかったって感じですね。
特に、収益構造については結構前から言われていた話で、崩壊はしてないと思う。
あ、ちなみに本書でもで説明されていますが、スポット広告にはGRPという考え方がございまして。
この説明が下手すぎるのでもう一度おさらいしますと。
GRP(述べ視聴率)= 広告の本数×世帯視聴率
という数式で定義されます。
例えば視聴率15%のドラマに6本CMを流したかったら、15×6=90GRPになるわけですね。
これで例えば営業が広告主に、1000GRPをいくらで、みたいな感じで営業するわけです。
全部15%のテレドラに流すわけにはいかないので、5%の深夜番組とか、流す枠を使い分けたりして。
で、単価ってやつが大事になわけです。
7年前は在京キー局でGRP単価は10万円程度。今のフジは7万円くらいだとか。
要はこれ、視聴率が下がってるから、その分CMを流さなきゃいけないってことなんですけど。
ただ、放送法で一週間でCM流せる時間て18%と決まっているんで、むやみに増やすわけにはいかない。
それでGRPに届かないってこともあるわけです。
そういうところに、広告主が大枚はたいてCMを流すかっていう。
そりゃ視聴率No.1の局に流したくなりますよね。損したくないし。
いまだって1000GRP獲るのに7万×1000GRPで7000万かかる訳ですからね。
このスポット広告という制度、たぶんなくならないと思います。
テレビというメディアのリーチ力はやっぱりすごいし。
でも、放送収益はやっぱり減るでしょうね。TBSだって視聴率取れないから不動産収入とか映像・文化収入が放送収入を超えてるわけだし。
しかしまあ、この記事によりますとフジテレビの売上高は6433億円。
対して日テレ3624億、テレ朝2764億、TBS3478億、テレ東1286億。
で、フジの広告収入はそのうち63%なんで、約4050億ですか?
まあ、この雑誌がフジを悪く書きたいのかこれを明かしてないんですけど、もう広告収入だけで他局を優に超えちゃってるわけです。
数字と文字のマジックなんですかね。みんなフジを悪く書きたいみたいな。まあいま話題性あるしなぁ。
流す時間はもちろん全局いっしょなわけですから、フジの広告単価がいかに高いかって話が分かるわけです。
むしろ、売上高3624億の日テレは91%が放送収入なんで、番組が傾いたらやばいのはむしろこっちなんじゃ?って感じです。
日テレはずっと視聴率いいから今その心配はないんでしょうけど。
だからまあ、この話は気にしなくていいと思います。
これからより気にしなくちゃいけないのは、コンテンツの話。
まあフジのコンテンツは本誌が指摘する通り、ひどいですよ。
報道でも平気に嘘ついちゃうし、偏向報道とかそういう次元を通り越してると思うし。
ぼくはWBSとエンタメニュース以外、民放でニュース見ないって決めてるんですけど、各局民放のニュースって何の価値があるんですかね。
もうネットニュースで見たい時間に見るので十分じゃないですか?ソースは新聞で同じなわけだし、最近はもう動画もついてますしね。
事件を起こした少年の近所に住む住民の反応とか飽きましたよ、もう。
それも週刊誌の方が情報価値として優れてるんじゃないかなぁ。琴線に触れるようなコメントをするセンスいいコメンテーターだっていませんしね。
だけどしかし、なんでそれでもテレビが成り立っているかというと。
人が基本的に受動的だからですよ。
だって楽じゃないですか、ボタン1つで勝手にショーやってくれるんですから。
こっちから能動的になる必要、一切ないですよね。
選ぶのもチャンネルくらいだし。
で、日テレ、テレ朝のコンテンツってちょうどいいんですよ。受動視聴に。
フジは、そこで「楽しくなければテレビじゃない」の呪縛から抜けられないからそこで頑張って視聴者に能動的なコンテンツを作ろうとしちゃう。
結果、こけちゃう。
でもこれにはもう1つ考えてることがあって。
もう、亀山さんはテレビで面白いコンテンツ作るのやめようとしてんじゃないかなと思います。
だっておかしいでしょ?いいともやめて、確実に面白くないバイキングはじめちゃうのも、
50年くらい続いた昼ドラやめちゃうのも。
もう、テレビっていうメディア見限ったとしか思えない改編ぶりですよ。
本当に視聴率上げようと思っててこれやってたらヤバいですって。
つまり、何が言いたいかというと、いまフジがやってることは何年か先の施策なんです。多分。
何年か先、というのは、視聴者が受動的から能動的に変わったときのこと。
だって、iphone使えないおじいちゃんじゃない限り、いまの50代もスマホ持っちゃってるわけでしょ。
これはもう、生活者の情報リテラシーが上がったって事で、テレビっていう受動的なメディアはそこまでの価値を持たなくなったってことなんじゃないかと思うのです。
そこで受動メディアであるテレビが担うコンテンツって、視聴者が受動的であるときにちょうどよく面白いコンテンツです。
それがいまできてるのがテレ朝、日テレ。
そんなこといいつつ、全局情報バラエティでやってることなんてたいして変わらないんですけどね。
だれが出てるかってくらいで。(だから『グッディ!』は安藤さんと高橋克実にそんな好感度なかったってことなんでしょうね。)
むしろこれからは、動画配信で能動的に見るメディアを作って、地上波では良い意味で受動的に見れるメディアを作るのが一番時代に合ってんじゃないかな、
フジはそれをやり始めてんじゃないかなと感じます。
その姿をやれフジはオワコンだ、テレビは情弱だ、ってネットニュースやこういう雑誌に乗っかってドヤ顔するやつのほうが考え浅いと思います。
まあそういいつつ、これからはどうなるかわかりません。
正直な話、そんなに有料視聴するわけでもない日本人がネットフリックスにオンボーディングするかもわからないし、
結局、能動的に見なきゃいけない優良コンテンツだってテレビで見てるかもしれない。
ただ。視聴率の低下をきっかけに、売上は業界一位ながらも、フジが今行っている施策は選択として間違いではないと思うのです。
しかしテレビで面白いコンテンツを力変えて作ろうとしている現場にそれを伝えずに口を出してるだけならば、
いまお茶の間にいる視聴者からは一度目をそらしているということだと思うので、そんな局に心を掴めるコンテンツが作れるのかというのは疑問ですが、
もう、局の人でコンテンツ作るのはやめればいい。
志のある制作会社の人にいまより遥かにいい環境を整えて、優良なコンテンツを作ってもらえばいいんです。
だってもう、局員で「楽しいテレビ」を作るのは無理なわけですから。
でも、そんなことをしながら、メディアにとって一番痛いのは、もう話題にもならないこと。だからこうして雑誌やネットメディアである意味炎上させて視聴者に気にさせ続けていると思うんですよ。
でもしかし、業界従事者やビジネスに興味のない純粋な視聴者には、そんなこと興味ないはず。
ネットから始まり、所謂世論は「テレビってオワコンじゃん」てところどころで呟くだけ。
まあいいんですけど。
で、テレビを殺すのは誰かという問いですが、もうおわかりですね。
この記事を読んでくださってる、あなたです。
ただこの本は当時買ったとき鬼のように読みふけりました。
超面白かった。いま読むと、どう思うんだろう。