週刊ゲタバコ批評 週刊少年ジャンプ12/7号 最近のジャンプキャラはなぜ「過去」を背負うのか
巻頭 新連載 | ハイキュー!! |
1 | ONE PIECE |
2 | 暗殺教室 |
3 | バディストライク |
4 | 食戟のソーマ |
5 | 僕のヒーローアカデミア |
6 | 背すじをピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜 |
7 | ものの歩 |
8 | トリコ /td> |
9 | 火ノ丸相撲(センターカラー) |
10 | こちら葛飾区亀有公園前派出所 |
11 | ブラッククローバー |
12 | 斉木楠雄の屮難 |
13 | BLEACH |
14 | 左門くんはサモナー |
15 | 銀魂 |
16 | ニセコイ |
17 | ベストブルー |
18 | 磯部磯兵衛〜浮世はつらいよ〜 |
僕のヒーローアカデミアが面白い展開になってきましたねー
やはり日常→急な敵襲来的な展開がこのマンガはとてもうまいです。
しかし最近はやりの世界ぶっ壊れた系ではなく、決まった世界観ファンタジーもしくは特定の現代社会感を出した世界での少年マンガしかないというのがジャンプの素晴らしいところ。
あとベストブルー、最終回は素晴らしかったんじゃないでしょうか。 というかここまで第一話と最終話だけ素晴らしかった打ち切り作品は珍しいですよ。 最後のレースだけよかったなあと思います。
ただ、やはりもっと登場人物を絞って主人公に焦点を充てた方がよかったと思う。 つまり青野とコーチとの師弟関係を中心に描いて欲しかったです。 それからこの作者、キャラデザインが下手。
いやしかし、伏線からのストーリー盛り上げ、要は「エモい」演出はうまいと思いました。 ただユーモアが中途半端。というか足りない。
その点。今号巻頭カラーのハイキュー!!はそこらへんすべて素晴らしいですね。
ぼくにとって『ハイキュー!!』のどこが一番素晴らしいかというと、 登場人物が過去を背負っているというところ。
今回はそれについて、国民的少年スポーツマンガ『SLAM DUNK』と比較しながら見ていきましょう。
まず、セッター、アタッカーとして変人速攻コンビを組む日向と影山。 つまり一年ルーキーが高校からバレー部に入るところからこのお話は始まるわけです。 2人はいがみあい、初めて行く体育館コートではケンカしてしまい部長から追い出される始末。 つまり、ここで2人の関係とプロフィールは桜木と流川と全く同じ。 澤村は部長でいわゆるゴリポジション。 そしてノヤっさんこと西谷は教頭に手を出した問題児、背が低いリベロという点でりょーちんポジション。 菅原はめがね君、東峰はみっちー、縁下はヤスってとこかなって思ってました。 田中はどこにも所属せず。
しかし湘北と烏野の違いは、「過去を背負っているかどうか」
たしかにみっちーやゴリやめがね君の過去は分かりやすく描かれていますが、 それはバスケ部に入部してから、3年間の重みを表しているもの。 しかしハイキューのメンバーは日向、影山、月島も過去を背負う男たち。 そしてその過去をバレーの試合中に乗り越えるというストーリーライン。 これが試合のいいとこで出るもんだからぼくはそれにやられちゃって面白い!ってなっちゃってるわけですね。
でもこれ、ハイキュー!!に限らない話で。
たとえば国民的ファンタジー少年マンガ、ONE PIECE。 彼らにも絶対的な過去が存在し、「○○篇」(○○には敵か島の名前が入ります)でそれぞれの過去が何週かに渡って描かれます。 ぼくはウソップの過去篇が一番好きなんですけど。 対してドラゴンボール。過去、ほとんど一切ありません。あるのは神様とトランクスくらい。(トランクスは未来だけど) 悟空も、実はサイヤ人の生き残りだったってくだり、過去ではありません。 あれは説明にとどまっていて、悟空が物心ついた少年期からは皆さんご存知の通り一巻から描かれているのがドラゴンボールです。 他の作品も見てみましょう。 銀魂…幕末の過去がたくさん。いま、過去を描きながら最終決戦を行っています。 僕のヒーローアカデミア…第一話から主人公の出生、過去が描かれています。 火ノ丸相撲…火ノ丸の中学時代がちょいちょい出てきます 暗殺教室…殺センセーは殺し屋だったという過去ありましたね。 BLEACH…よくわからんところでほぼ全キャラクターの過去篇突入しますね。 トリコ…スラムの飢えたこどもだったという過去。 ものの歩…こちらも第一話から中学時代の過去。 こちら葛飾区亀有公園前派出所…これも両さんの過去篇がたまに描かれる! というところ。
こち亀はさておき、この過去があると読者にもたらされるイメージはというと、
1 登場人物への共感の深さ
これが効果としては一番でかいですね。 とくにONE PIECEなんかそう。たとえばナミやサンジのところとかで何でお金が好きなのか、なんで料理を大切にするのかというキャラクターをより理解できる材料なのです。 それでいてその過去を背負って敵と戦うので、読者としては、「頑張れ!」「どうなるの!?」ってなる。 これはアーロン篇でナミの「助けて」からルフィがアーロンパーク内のナミの部屋を壊すところで如実に表れてますね。 とくに先週も書きましたけど、火ノ丸相撲もそう。それぞれの過去があるから試合が気になっちゃうわけです。
2 時間軸による世界観の広がり
黄金期(90年代)のジャンプマンガは時間軸が「今」から流れています。
驚くほど過去に時間軸が戻ることはありません。 つまり黒枠のページが少ないのです。
いまトリコは急に小松達の過去に話を戻して、ドンスライム?誰やねん的な感じになっていますが、そんな演出も多くない。
つまり、黄金期が現在→未来に時間軸が基本的に敷かれているとしたら、 現在のジャンプマンガは過去→現在→ちょっと先の未来に軸が敷かれているのです。 この、ちょっと先の未来というところがミソ。 もう、ワンピもBLEACHもNARUTOも結構先の未来まで見せるのに大分時間をかけます。
それこそ、主人公と読者が同じくらい年を取るくらいに。
その点、「ドラゴンボール」は天下一武闘会が終わる度に時計を何年か先に回し、 登場人物達がとしをとったところからまた○○篇を始めるわけです。 つまり、いまのジャンプマンガにとって「少し先の未来」が限りなくリアルなものとして目指されていることがわかります。 だから、ハイキュー!!の試合は長いですね。 SLAM DUNKでも山王戦とかいつ終わるのかくらいに思ってましたけど、せいぜい6巻分いかないくらい。 白鳥沢高校篇もそれくらいやってるんじゃないかって長さです。
これによって、時間的な世界観に広がりが出るとぼくは思います。
ちょっと先の未来を目指しつつも、それは現在からではなく過去からのものだから、結構昔から目指してた感がある。 銀魂なんて、いつから最終決戦やってるんですかね。もう二年前くらいですか?
で、本題、何で過去を背負うのか。
それは、ジャンプ読者が年を取った事以外考えられないのです。 つまり、ジャンプの読者層は年々上がっているということ。
かつては「少年」が、読むものだったのが、いまでは30代までも毎週立ち読みなり購読して、こうしてネットであーだこーだ言ってる。彼らはもう、過去を背負った人々で、何も失うことのない少年ではないのです。 だから、ジャンプヒーロー達の「過去」に感情移入する。世界観の広がりを感じる。そんな風に思います。 でもね、何も考えずに読めるコンテンツが欲しいんですよ。ジャンプには。 こち亀とか磯兵衛みたいなギャグマンガのことを言ってるんではなくて。
そういう意味でトリコとか最初めっちゃよかったんだけどなあ。 生物を読者募集してなんでもありじゃねえかって思ったところから読むモチベーション下がった感じ。 あれはコンテンツの世界観を壊したといういい意味で悪い例ですね。 筋肉超人とラッキーマン以外あんなの募集しちゃだめよ。
そんなわけで、そういう意味での何も考えずに読めるジャンンプマンガとして、ぼくはブラッククローバーに期待してます。
毎週なにかしらアスタが剣を振り回し、見せ場をコマぶち抜きでやってるのがちょっとハナにつきますが、あの直球さはいい。 過去も存在しないし、魔法帝になるというわかりやすい夢に突き進んでいく感じが好きです。
とかいいつつ、現在のシーンを描く上で過去をエモい演出として巧みに使うハイキュー!!も好きなんですけどね。
さて来週、ツッキーが戻って来た烏野と白鳥沢の最終決戦。 楽しみです。
ハイキュー!! コンプリートガイドブック 排球本! (ジャンプコミックス)
- 作者: 古舘春一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/10/03
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (8件) を見る